なぜ若手社員は退職するのか?逆境に強い組織づくりセミナー
組織衰退を回避するための実践的な人材育成・組織基盤構築の方法論
価値観が大きく変化する中で、人材育成マネジメントはアップデートされていない。
「持論はあっても理論はない」が人材育成領域の問題であり、理論があればあいまいな
言葉で終わることはない、理論があれば何をすればいいかが分かる—。
当所では10月28日、逆境に強い組織作づくりセミナーと銘打ち、元DeNA人材育成責任者
で現在は人材育成支援、マネジメント基盤構築の(株)Momentor(モーメンター)代表取締役
社長として大手企業からスタートアップ企業まで幅広く支援している坂井風太氏を招いたセミ
ナーを実施した。坂井氏は「なぜ若手社員は退職するのか」に焦点を絞り、さまざまな学術や
理論に基づいて優秀な人材を確保、定着させ、文字通り逆境に強い組織づくりに重要な要素を
説いた。
坂井氏は、「会社は『終の棲家』から『止まり木』となり、個人のキャリアの作り方は変化し
ている」、「キャリア時間軸は2~3年となった」と働く人の価値観が変化している一方、人材育
成マネジメント分野では「自分(たち)はこのように育った」、「背中を見て育て」というような
抽象的な自己流育成マネジメントが跋扈(ばっこ)していると指摘。こういった育成マネジメント
のなかでも生き残ってきた(辞めなかった)人たちが語る美徳、武勇伝が正当性を帯びることで
「生存者バイアス」が生まれ、上司に訴えても会社は変わらない「言っても無駄」という若手社
員の失望、間違っている可能性があるルールを誰も見直さないことによる組織の硬直化を招くと
いう。
若手社員は「この職場に居続ければ自分のキャリアの展望は明るい」というキャリア安全性を
重要視しており、SNSなどで活躍する同年代を垣間見て焦燥感に駆られるキャリア焦燥感を抱き
やすい。焦燥感に駆られ「この職場にいても無駄」となれば退職に結び付くが、上司や先輩の
働く姿勢や適切な示唆(励まし)がキャリア安全性のキーになる。
自己効力感、組織効力感
「挑戦しよう!」、「がんばろう!」の一言だけで人や組織は変わらない。挑戦に対して自分は
達成できる、できるようになるという「自己効力感」、この組織、メンバーならできるという
「組織効力感」のバランスも人材の確保に欠かせない。組織効力感が低ければ自己効力感の高い
人材から辞めていく。組織効力感を高めていくためには、組織としての成功体験を共有すること
などに加え、組織としての感情状態も重要だ。成功体験に対して、どこに気を配り成功したかを
言語化した上での「褒め」を欠かさないこと、この褒めを伝聞で伝えることでさらに効果が高ま
る。悪い話ばかり聞こえてくるネガティブゴシッピングから脱却し、ポジティブゴシッピングが
組織としての感情を良くする。口癖が組織をつくる。
無自覚的に行っている他人に対する配慮を欠いた失礼で無作法な態度「インシビリティ(礼節の
欠如)」を排除すること、自分の考えが必ずしも正しいとは限らない、誰からでも何からでも学び
すぐに行動する「知的謙虚さ」も組織効力感を高めるために欠かせない。