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小林俊日銀新潟支店長「新潟県経済の現状と課題」

研修会・セミナー

当所金融部会主管による日本銀行新潟支店長講演会が昨年12月18日に開かれた。小林俊日本銀行新潟支店長は、「三条市には全体的なものづくりのパワーに強みがある。この強みに加えてデジタル化を進めていただくことで労働生産性、付加価値を高め、新たな産業を興す戦略を自己認識とともに考えていただきたい」と述べた。小林支店長は、日米欧の実質GDPやインフレ率、日本銀行の物価見通しなどのデータを示しながら、日本と欧米で異なる物価上昇の中身や水準感の違いが、かたや金融緩和、かたや金融引き締めという政策の違いにつながっていると説明。国内においては「物価上昇率が2%を上回るところまできたが、賃金上昇率が追い付いておらず、実質所得がマイナスで推移し、個々の家計で考えると生活が苦しいという実感につながっている」と、大局的な視点から家計まで経済情勢を見通した。「賃金上昇率が物価上昇率を上回る理想の経済情勢」を目指すためには、金融政策だけでなく、企業の生産性向上や、「物価上昇は当たり前、賃金上昇もある程度のレベルまでは当たり前」という国民の認識の変化も重要だと述べた。

県内経済、全国比で好調も課題感

昨年末時点の県内経済については「新潟県内の消費は全国平均の動きと比べると非常に好調」であり、日本銀行が行っている「企業短期経済観測調査」でも景況感が良いと考える経営者が、悪いと考える経営者を超え、調査先企業の利益も伸びるなど、昨年5月の新型感染症の5類移行に伴う消費活動の活発化が消費や企業マインドを後押ししているとした。一方で「物価上昇に賃金上昇が追い付いておらず、家電大型販売店の販売額などしわ寄せが表れている分野もある」ことや、中身には違いがあるが「バブル経済末期に匹敵するレベルで人手不足を感じている企業が多い」という課題、「県内の製造業は中国向けの割合が高く、中国経済の足踏みの影響を受けやすいこと、全国平均と比べると自動車関連産業の割合が低い」という傾向も示され、物価上昇分の価格転嫁の難しい製造業の落ち込みも予測していた。

デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション

先に示された課題の解決について小林支店長は、「生産性、付加価値額の全国平均を100とすると、県内は70ほどで全国平均との差が気になる」と指摘、「ブランドやノウハウ、データ分析力、人材などの無形固定資産を労働者一人当たりがどれだけ持っているか、県内は全国平均を100とすると70弱であり、これが大元の労働生産性につながっているのでないか。これを引き上げていくための方策の1つがデジタル化であり、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)は無形固定資産を活用して利益率を上げて来た典型。中小企業においても、もともと持っている強みに加えて、デジタル化を進めていただきたい。紙ベースの情報をデータに置き換えてコストカットするデジタイゼーション、ビジネス戦略やプロセスをデジタル化するデジタライゼーション、デジタル化によって新たな産業を興すデジタルトランスフォーメーションという手順や、気候変動など世の中の状況を捉え、場合によっては先手で取り組むことだ」などと、小さな一歩からでもDX化などに取り組む意味合いを説いていた。

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